小児科ブログ

【アレルギー検査】39項目のアレルギー検査は慎重にすべき4つの理由

「水戸市」、「アレルギー」とgoogleで検索すると、「39項目」というワードが他のキーワードとして出てきます。

「水戸市」、「アレルギー」とgoogleで検索

これは「View39」というアレルギー検査を検索している人が多いのだと思います。
「View39」とは食物アレルギーやアレルギー性鼻炎などを引き起こす代表的な原因抗原39項目を検査するものです。

FALCO 臨床検査案内
FALCO 臨床検査案内サイト

View39の他にも、MAST 36, MAST48mixなど多抗原を同時に検査できるものもありますが、外来診療中、「View39という検査をやってほしい」と言われたり、「View39を検査してくるように学校から言われた」という方もいたりします。
それだけ「View39万能説」が広まっているのでしょう。
しかし、View39を検査する際は慎重にすべきです。その理由は次の4つです。

① 症状出現に対する心配を増やし、不要な食品の除去を助長する。

もし、普通に卵を摂取できていても、採血して卵白の値が最大まで振り切れていたらどう感じますか?摂取するのが怖くなりませんか?
また、まだ子どもに与えていないピーナッツの値が最大まで振り切れていたらどうしますか?一生食べられないとピーナッツを摂取させるのを諦めてしまいませんか?
1つ目の例では、除去の必要は全くなく、これまで通り摂取を続けてもらう、2つ目の例では少量から開始して症状誘発なく摂取できているようなら少しずつ増やしていくことになります。
View39を行うと、様々な食品で陽性になることがあります。採血結果のみを根拠とした不適切な除去を行うことで、栄養失調になる可能性も否定できません。

② 症状出現の可能性を計算できない。

食物アレルギー診療では「プロバビリティカーブ」という下の図を使用します。

プロバビリティカーブ
食物アレルギーの診療の手引き2020

この図の読み方は牛乳アレルギーの子のミルク特異的IgE抗体価の値と年齢がわかれば、牛乳200mlまでの症状誘発の可能性がわかるというものです。この「プロバビリティカーブ」を用いることで、症状誘発の可能性を考えながら診療をしています。

例えばミルク特異的IgE抗体価が3.0kUA/Lの場合、牛乳200mlまで摂取を病院で行った場合、あくまでも確率論ですが、症状を誘発する可能性は1歳未満の児では約90%、1歳児では約50%、2歳以上の児では約30%となります。

ここで出てくる「ミルク特異的IgE抗体価」というのはイムノキャップというView39とは別の1項目ずつ採血する項目を選んで採血した結果出てくる値となります。よって、このプロバビリティカーブというのはView39では使えず、症状誘発の可能性を計算できないということになります。だったら最初からイムノキャップで採血をしておいた方が良いということになります。

③ 項目が実態に即していない部分がある。

View39などの多項目検査で全て陰性であれば、「自分にアレルギーはない」と思うのではないでしょうか?しかし、実態は違います。まず、下の調査結果をご覧ください。

食物アレルギーの診療の手引き
食物アレルギーの診療の手引き2020

View39に入っていない項目があるのがお分かりでしょうか?
木の実類が入っていません。最近は木の実類の国内摂取量が増えていることもあり、特にクルミやカシューナッツなどのアレルギーが増えています。しかし、View39では検査できていないことになります。View39も全ての項目を網羅しているわけではないということです。

④ オボムコイド以外のアレルゲンコンポーネントが測定できない。

アレルゲンコンポーネントとは食物アレルギーの診断精度を上げるものです。下記のように様々な抗原に対して測定できるコンポーネントが用意されています。

コンポーネント 食物アレルギー診療ガイドライン2016 ダイジェスト版
(注:現在はクルミに対するJug r 1やカシューナッツに対するAna o 3などもある)

しかし、View39ではオボムコイド以外のアレルゲンコンポーネントの測定ができないため、アレルゲンコンポーネントの測定ができる抗原では、イムノキャップの診断精度がより高くなります。
アレルゲンコンポーネントについてはまた、別の回で解説したいと思います。
以上のことからView39を検査する際には慎重にすべきです。食物アレルギー診療の手引き2020にもView39などは原因不明の食物アレルギー検査の検索などスクリーニング検査と位置付けられ、診断や臨床経過の評価に用いることは推奨できないとされています。
イムノキャップでも13項目までは保険適応内で検査できますので、食物アレルギーやアレルギー性鼻炎などの症状を起こした状況から疑わしい原因抗原を選んで採血することを検討してください。

 

当院で実際にどのような食物アレルギー診療をしているかはコチラをご覧ください!