診療科

血管内治療グループ

はじめに

平成20年9月に発足した当グループは診療科横断的な診療グループとして、脳神経外科領域を除く全診療科の疾患を対象に、当該科の専門医と協議しながら患者様に最適な治療を提案することを掲げて活動しております。おかげさまで、今年9月には14年目を迎えますが、これもひとえに関係者の皆さまのご理解とご協力の賜物と心より感謝申し上げます。

 

対象疾患・診療内容について

診療の状況

ハイブリッドカテ室を含めた3台の血管造影装置で対応しております。当院は行うことができる手技が非常に幅広いのが特徴ですが、昨年は樋口医師が新たにIVR専門医を取得したことから、緊急対応を含めてより充実した診療体制を目指して参ります。症例数の推移は別表の通りですが、この1年間に当グループが関わる治療について、いくつかご紹介したいと思います。

昨年度はCOVID-19の影響もあり、例年に比べて末梢動脈疾患や大動脈ステントグラフト治療など多くの領域で症例数の減少が見られた一方で、透析シャントへの治療は昨年度は初めて500件に達しました。これは血管撮影室の1室を週2日(火曜日・水曜日)はシャント治療専用としたことが大きく影響しており、加えて緊急時にも速やかに対応できるように血管撮影室スタッフらの尽力によるものと考えております。今後も透析シャントに関しては緊急を含めて速やかに対応できる体制を維持できるように取り組んでまいります。

末梢動脈疾患(PAD)は、前述の通り例年に比べて若干の減少が見られました。しかし、下肢切断のリスクが高い重症虚血肢(CLI)症例の減少は見られませんでした。PADの領域では「救肢=救命」ということが言われますが、中には満足いく結果を出せなかった症例もあり、引き続き心臓血管外科や形成外科を中心とした関連診療科との連携を密にして、治療成績の向上に努めてまいります。

昨年度はPICC(末梢留置型中心静脈カテーテル)140例施行しております。PICCとは上肢などから挿入するタイプの中心静脈カテーテルであり、従来型の中心静脈カテーテルと比較して感染や合併症のリスクが低いとされています。この手技は看護師特定行為研修を修了した看護師により実施可能なため、当院では看護師特定行為研修とタイアップしながら積極的に取り組んでおります。現在は院内に普及してきた段階ですが、今後は在宅診療の場面でもお役に立てられるように取り組んでいきたいと考えております。

また添付の表には掲載していないものの、昨年度はリンパ漏に対するIVR(画像下治療)と、COVID-19患者へのECMO治療に新たに取り組みました。リンパ漏に対するIVRはまだまだ認知度が低い領域ですが、術後の乳び胸水や乳び腹水など、今までならコントロール困難で、場合によっては致死的な病態でした。それがIVRで治療できるため、患者にとっては非常に大きな意味を持ちます。当グループの非常勤医師である慶応大学放射線科の井上医師はこの領域で国内第一人者であり、井上医師の指導の下で術後のリンパ漏などの治療に取り組み始めました。まだ症例数は少ないものの良好な成績となっており、今後の普及が期待されます。またECMOは循環器内科や救急科で取り組んでいた実績がありますが、COVID-19でのECMOは通常と異なる特殊な環境での治療であり、試行錯誤の部分もありました。幸い、多くのスタッフの協力で対応することができました。まだまだCOVID-19の収束は見えませんが、この領域においても貢献できればと考えております。

以上、当グループの活動についてご報告いたしました。これからも病診連携、病病連携を推進し、地域医療に少しでも貢献できるよう微力ながら努力する所存です。引き続き、ご指導とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

令和3年 7月吉日

血管内治療グループ グループ長 千葉 義郎

ご紹介に際してのお願い

  • 診療科がはっきりしている場合は、該当する科の外来へご紹介ください。
  • それ以外は血管内治療外来での予約診療となります。
    地域医療連携室にご連絡ください。
  • 画像検査等のデータはご持参いただくか、出来るだけ事前に地域医療連携室宛に郵送をお願いします。
  • 透析シャントトラブルについては腎臓内科医師に直接ご連絡ください。
  • 緊急症例については可能な限り対応いたします。病院に直接ご連絡ください。

医師紹介

グループ長

千葉 義郎(ちば よしろう)

所属学会・認定資格 日本内科学会 認定総合内科専門医・指導医
日本循環器学会 専門医
日本心血管インターベンション治療学会 専門医
日本インターベンションラジオロジー学会 専門医
ステントグラフト指導医(胸部・腹部)
日本脈管学会 脈管専門医
日本不整脈学会
ICD認定医
CRT認定医
死体解剖資格
担当領域

虚血性心臓病、閉塞性動脈硬化症、腎動脈狭窄症、肺血栓塞栓症、動脈瘤に対する塞栓術などの循環器領域の他、消化器領域(特に肝細胞癌に対する肝動脈塞栓術、中心静脈ポート増設)や呼吸器領域(上大静脈症候群に対するステント留置、気管支動脈塞栓術)など幅広く担当しています。

副グループ長

樋口 基明(ひぐち もとあき)

認定資格

日本内科学会 認定総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本心血管インターベンション学会 認定医

ICD認定医

CRT認定医

日本脈管学会 専門医

日本IVR学会 IVR専門医

  • 海老原 至(えびはら いたる) 腎臓内科
  • 黒澤 洋(くろさわ ひろみ) 腎臓内科
  • 椎名 映里(しいな えり) 腎臓内科
  • 金野 直言(こんの なおあき) 消化器内科
  • 川原 有貴(かわはら ゆき) 循環器内科

非常勤顧問

井上 政則(いのうえ まさのり)

所属学会・認定資格 慶応義塾大学医学部 放射線診断科 助教
日本医学放射線学会 専門医
日本インターベンショナルラジオロジー学会 専門医
ステントグラフト指導医

遠田 譲(とおだ じょう)

所属学会・認定資格 三井記念病院 放射線科
日本医学放射線学会 専門医
日本インターベンショナルラジオロジー学会 専門医
検診マンモグラフィ読影認定医

サポートスタッフ

消化器内科

仁平 武、柏村 浩、青木 洋平

循環器内科

山田 典弘

心臓血管外科

倉岡 節夫、篠永 真弓、上西 祐一朗

消化器外科

丸山 常彦

整形外科

生澤 義輔、野村 真船

救急科

村岡 麻樹、遠藤 浩志

形成外科

芳賀 康史

実績表

症例総数

年度 H26年度 H27年度 H28年度 H29年度 H30年度 R元年度 R2年度
症例総数 409件 489件 492件 660件 821件 783件 972件

透析シャント関連

年度 H26年度 H27年度 H28年度 H29年度 H30年度 R元年度 R2年度
シャントのバルーン拡張術 73 112 144 286 411 390 500
鎖骨下静脈狭窄例 8 9 5 12 2 1 5
長期留置カテーテル(テシオカテーテル)留置 5 5 9 20 20 18 35

腫瘍関連の動脈塞栓術

年度 H26年度 H27年度 H28年度 H29年度 H30年度 R元年度 R2年度
肝細胞癌への動脈塞栓術 22 43 60 48 25 14 11
子宮筋腫に対するUAE(子宮動脈塞栓術) 1 9 0 5 6 1 6
その他(動注療法を含む) 6 3 3 2 0 0 0

末梢動脈疾患のカテーテル治療

年度 H26年度 H27年度 H28年度 H29年度 H30年度 R元年度 R2年度
下肢 140 126 123 119 153 167 138
その他(腎動脈、鎖骨下) 3 3 4 5 7 6 1
血栓除去             6

大動脈ステントグラフト内挿術

年度 H26年度 H27年度 H28年度 H29年度 H30年度 R元年度 R2年度
腹部 45 51 38 23 40 40 31
胸部 16 25 29 18 22 16 24
エンドリークの塞栓術   10 13 26 20 9

内臓動脈瘤

年度 H26年度 H27年度 H28年度 H29年度 H30年度 R元年度 R2年度
総数 8 9 11 22 25 32 4

出血に対する動脈塞栓術

年度 H26年度 H27年度 H28年度 H29年度 H30年度 R元年度 R2年度
外傷 7 12 11 6 13 10 7
消化管出血 3 7 6 8 1 2 9
周産期関連の出血 4 2 1 2 4 2 2
その他 3 10 11 19 15 20 17

VTE(静脈血栓塞栓症)関連

年度 H26年度 H27年度 H28年度 H29年度 H30年度 R元年度 R2年度
下大静脈フィルター
留置
8 10 3 6 7 2 2
回収
3 5 1 4 5 1 3
深部静脈血栓症のカテーテル治療 4 5 2 14 15 7 2
肺血栓塞栓症のカテーテル治療 0 0 0 0 0 1 1

その他

年度 H26年度 H27年度 H28年度 H29年度 H30年度 R元年度 R2年度
上大静脈ステント 5 4 0 0 0 0 0
胃静脈瘤へのBRTO 3 1 2 0 3 4 4
中心静脈ポート造設 7 12 2 8 10 12 11
内分泌疾患サンプリング 6 5 0 2 3 2 2
気管ステント 2 0 0 0 0 0 0
異物回収 1 1 0 1 1 0 1
バイオプシー(CT下、その他) 3 2 2 0 0 0 0
心嚢ドレナージ 1
PICC 140