
眼科
ドクターインタビュー

母の入院をきっかけに医師を志す
私は京都府の乙訓郡で生まれ育ちました。小学校低学年の頃は担任の先生に「落ち着きがない」と言われていた記憶がありますが、本格的に勉強に取り組むようになったのは中学生になってからです。そのきっかけとなったのが、母の長期入院でした。幼いながらに不安を感じつつも、入院中の母の姿を見ているうちに、医療の世界に関心を持ち始めたことを覚えています。「医師になりたい」という思いは、この頃から自然と心に根づいていったのだと思います。
眼科を専門に選んだのは、大学卒業の直前のことでした。学生時代は整形外科にも興味がありましたが、眼科の診断から術後の経過観察まで一貫して関われる点に魅力を感じました。
視覚は生活の質に直結する大切な感覚です。患者さんが日常生活を安心して送れるように、できるだけよい見え方を保ち、少しでも不安を軽くできるようにしたい。そのために、必要な知識や技術を常に磨きながら、一人ひとりと丁寧に向き合っていくことを大切にしています。

小児から高齢者まで幅広い眼科疾患に対応
当院の眼科では、幅広い疾患に対応できる体制を整えており、ほとんどの眼科疾患に対して診療および治療を行っています。特に隣接する県立こども病院からは、小児の眼科疾患を中心に多くの患者さんをご紹介いただいており、未熟児網膜症や斜視・弱視といった小児特有の病気も日常的に診療しています。
地域のクリニックや医療機関からは、白内障や緑内障、網膜硝子体疾患、眼瞼(まぶた)や眼筋の疾患など、手術を目的としたご紹介を多くいただいており、地域の中核病院としての役割を担っています。

成長に応じた適切なタイミングでの診療
小児の目の疾患についてお話ししますと、当院では未熟児網膜症、斜視、弱視など、成長期に特有のさまざまな症状に対応しています。
未熟児網膜症は、生まれた時に早産だったお子さんに見られる網膜の異常で、早い段階での経過観察が大切です。ただし、無事に網膜の発達が進み、問題が見られなければ、その後のフォローは必要なくなるケースも多く、成長とともに診療が終了します。一方で、治療を要する重症例では、定期的な検査や必要に応じた処置が続きます。
斜視(左右の目の視線が一致しない状態)に関しては、治療の一環として手術を行うこともあります。小児だけでなく成人にも適応があり、視機能の向上と見た目の改善の両方を目的として治療します。斜視は一度改善しても、成長とともに再発することもあり、中学生や高校生まで長期にわたって経過観察するケースも少なくありません。
弱視(視力の発達が不十分な状態)については、眼鏡の装用を中心とした訓練が治療の基本です。特に小学校に上がる前くらいまでが治療の重要な時期とされています。この時期を逃すと、視力の改善が難しくなるため、できる限り早期に発見し、介入することが望まれます。
実際に診察を希望される最も良いタイミングは、3歳児健診の後と考えています。最近では、1歳前後のお子さんが受診されるケースも増えています。これは「スポットビジョンスクリーナー」という機器の普及によるもので、遠くからカメラのように目を撮影するだけで、近視や遠視、乱視の有無が簡単に分かるというものです。小児科や保健所などでも使用されており、早期発見にはとても有効です。
ただし、あまりにも早すぎる段階での診断は、治療の判断が難しいこともあるため、医師としても慎重に対応しています。お子さんの成長と発達を見ながら、最も適したタイミングでの診察と治療が行えるよう努めています。

緑内障は生涯管理が必要な疾患
加齢に伴って起こる眼の疾患の中でも、特に患者さんの数が多いのが白内障と緑内障です。白内障は、加齢によって水晶体(目の中でレンズの役割を果たす部分)が濁ってくる病気で、大部分が年齢とともに進行します。手術で濁った水晶体を人工のレンズに置き換えると視力が改善し、術後の経過が良好であれば通院は必要なくなる場合が多く、「治る」疾患の代表といえるでしょう。
-
正常な目
-
白内障の目

一方、緑内障は視神経が徐々に障害される病気で、こちらも高齢になるにつれて患者数が増加しますが、白内障と異なり完治することは難しく、一生にわたって管理が必要になります。緑内障の治療では、主に眼圧(眼の中の圧力)を下げる点眼薬や手術が用いられます。たとえば「うつ伏せで寝ると眼圧が上がる」ことが知られており、進行を防ぐためにも寝姿勢にも気を配ることが大切です。

VEGF阻害薬の硝子体注射について
また、糖尿病網膜症のような、全身疾患に起因する眼の合併症も増えており、早期発見・早期治療が重要です。
近年、加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫などに対して行うVEGF阻害薬(抗血管内皮増殖因子薬)の硝子体内注射が急増しています。この注射は、病気の進行を抑えるために網膜の下にある黄斑という重要な部分の異常な血管の発生を防ぐもので、視力低下を防ぐ治療の一つとして広く行われています。ただしこの治療は1回で終わるものではなく、定期的な投与が必要です。そのため、患者さんとは長いお付き合いになることが多く、継続的な通院と治療が求められます。
硝子体注射の方法

硝子体手術は慎重な適応判断が求められる
このVEGF阻害薬による治療は、かつては病院でしか実施できないとされていましたが、近年では感染対策や医療体制の整備が進み、一部のクリニックでも対応可能になってきています。ただし、治療が始まると長期にわたることが多いため、患者数が増える一方という実情もあります。
もう一つの分野として、硝子体手術があります。網膜剥離や糖尿病網膜症の進行などに対して行うこの手術は、技術的にも高度な治療ですが、治療後の視力の回復が不安定であるケースもあり、すべての患者さんにとって手術の結果が明確に「改善」となるわけではありません。そのため、慎重な適応判断が必要であり、当院でもご紹介いただいた患者さんに対して責任を持って治療にあたっています。

学び続ける姿勢と責任感を大切に
私は日々診療にあたる中で「いま目の前にいる患者さんにとって最も良い治療は何か」を常に考えながら対応しています。限られた医療資源や人員の中であっても、治療の質を落とさず、患者さんにとって納得のいく医療を提供したいという思いが根底にあります。そのために、新しい知識や技術にも積極的に目を向け、必要であれば自分でも学び直し、現場に取り入れていく姿勢を大切にしています。
また、現在は私よりも若い世代の医師たちを指導する立場でもあります。眼科医としてのキャリアを積んできた中で得た知識や技術を伝えることは、私にとっての大きなやりがいであり、診療を続けていくうえでの一つのモチベーションでもあります。

地域と連携し、中核病院としての役割を果たす
地域の先生方には、日頃よりご紹介いただきありがとうございます。当院では、特に小児の斜視手術や弱視治療など、専門的な対応が必要な症例を多く受け入れております。斜視の手術に関しては、この地域で対応可能な施設が限られており、当院が中心的な役割を担っております。
また、白内障手術を実施されていない先生方や、日帰りではなく入院での手術を希望される患者さんについても、当院で対応させていただいております。ご高齢であったり、基礎疾患を有しているなど、少しリスクの高い症例に関しても、できる限り安全に配慮した対応を行っております。
今後も地域の中核病院として、かかりつけの先生方と連携を図りながら、患者さんにとってより良い医療を提供できるよう努めてまいります。診療においてご不安な点やご相談がありましたら、どうぞお気軽にご連絡ください。


職名 | 副院長/主任部長 |
---|---|
出身大学(卒業年) | 筑波大学(昭和62年) |
専門領域 | 小児眼科/ロービジョン/眼窩形成外科/手術全般 |
日本眼科学会 眼科専門医
PDT認定医
医療安全管理者
茨城県眼科医会 常任理事
茨城県アイバンク理事
国保診療報酬審査会委員
茨城県社会福祉審議会(身体障害者福祉専門分科会)委員