循環器センター

インぺラについて

IMPELLA
補助循環⽤ポンプカテーテル

茨城県2番目の施設として当院でインぺラの治療が可能となりました

インペラ(IMPELLA)とは、2017年9月から本邦に導入された左心室負荷を直接軽減する補助人工心臓の一つです。2019年に当院がインペラの施設認定を受け、2020年より実際の治療が可能となりました。

特徴

特徴急性心筋梗塞や重症心不全、劇症型心筋炎などで心原性ショック(自分の心臓で、全身に血液を十分に送ることができない状態)に陥った患者さんに対して、心臓の代わりとなって全身に血液を送るための循環補助装置です。カテーテルやポンプが非常に小型のため、これまでの循環補助装置よりも体への負担が少ない治療です。

適応

インペラ(IMPELLA)は、あらゆる内科療法に抵抗性の心原性ショックが適応になります。具体的には超重症心不全症例の心不全が悪化した場合や、急性心筋梗塞や劇症型心筋炎で搬送される緊急重症ショック症例に有効と考えています。

種類

現在IMPELLA2.5、IMPELLA CP、IMPELLA5.0の3種類のカテーテルが使用可能です。IMPELLA2.5とIMPELLA CPはそれぞれ2.5L/分と3.7L/分の循環血液量の補助が可能で、大きな切開をせず動脈穿刺により12Frないし14Frのシースを挿入したうえで留置します。IMPELLA5.0は5.0L/分と大きな流量の循環血液量の補助が可能ですが、カテーテルが太いため、外科的に切開し、鎖骨下動脈や大腿動脈に人工血管を装着する処置を行った後に、人工血管からIMPELLAを血管内に挿入します。

方法

足の付け根から経皮的・経血管的にポンプカテーテルを挿入、ポンプ内の羽根車を高速回転して左室内のカテーテル先端の吸入部から血液をくみ出して、大動脈に位置した吐出部へ送り出すことで、順行性補助循環を可能にしています。

「心不全/心原性ショックチーム」による治療

IMPELLAの治療・管理は一人の医師のみでできる治療ではありません。心不全を専門とした循環器内科医、心臓血管外科医、カテーテル治療医、麻酔科医といった医師に加え、臨床工学技士、循環器病棟看護師、ICU看護師、放射線技師など、心不全や心原性ショックに関する高度な知識と技術そして経験を持った心不全治療の専門チームにより行われる治療法です。

ECMOとIMPELLAの融合「ECPELLA」

お互いの弱点を補う新しい低侵襲な心肺補助法

重症の心不全による心原性ショック状態になった場合は、VA-ECMO(PCPSとも言います)を装着する場合がありますが、これは外科的切開を施行せず、即座に経皮アプローチで行える人工心肺装置で、従来から行われてきた生命を維持できる救命治療です。ほぼ心停止ないし心停止に近い状態になった重症心不全の場合でも、心臓や肺の機能を代替することにより生命を維持することができます。しかしECMOは良いことばかりかといえばそうではありません。この方法は全身臓器への血液の灌流が良くなる一方で、機械からの血流が自己の心臓には強い負荷になり、心臓がその負担に耐えられず、機械のサポート量を増やせば増やすほど、自己の心臓が更に動かくなってっくるというジレンマを抱えた治療でした。また機械から押し込まれてくる血流に心臓が負けてしまい、心臓の出口にある大動脈弁が閉鎖され、心臓(左室)の中の血流が停滞することにより心臓内に血栓ができしてまったり、肺に血流が停滞し著明な肺水腫を来したりして、現在の病態をより複雑にすることも多々ありました。そのため今までは大動脈内バルーンパンピング(IABP)という心臓の負担を軽減させる心臓補助装置を併用したり、それでも肺うっ血の改善が乏しければ持続血液透析濾過法(CHDF)という機械的な治療を併用してきましたが、IABPは補助流量が 0.3~0.5L/min と少なく、またCHDFは心臓を直接サポートをする治療ではないため、やはり心臓は負担に耐えられず最終的に救命できないという場合が少なくありませんでした。

当院で新たに使用可能となったIMPELLAという補助循環ポンプカテーテルは、VA-ECMOと併用すること(「ECPELLA」と呼ばれます)により、従来のVA-ECMOの短所を補うことができる最良のパートナーデバイスです。心臓に代わって心臓内の血液を本来の血流と同じ方向に汲み出すことによりVA-ECMOの駆動による心臓の負担を軽減し、そして心臓内の血液の停滞をなくし心臓内に生じてくる血栓の出現を抑制し、また肺水腫を改善させることができます。この「ECPELLA」と呼ばれる全く新しい治療法により、今まではVA-ECMOのみで救命不可能であった重症心不全患者さんを救命できる可能性が改善しました。

エクペラ

ECMO(エクモ)とIMPELLA(インペラ)の融合「ECPELLA」は、お互いの短所を補うことができる相補的な心肺補助法です

Impellaアニメーション動画