部門

病理部

病理組織学的診断の対象となるのは、手術および試験切除・内視鏡検査で得られた生体組織と穿刺および塗抹等で得られた細胞です。目的は病変の性質、程度、範囲等を判定し、疾患の最終診断に直結すると共に、適切な治療方針を確定することです。
病理組織学的診断は患者さんの生命をも左右する重要な検査です。

病理部 病理診断科について

病理部は、8人(認定病理診断医1名、非常勤認定病理診断医1名、臨床検査技師5名、パート1名)からなり、
(1)生検・細胞診診断 (2)手術材料診断 (3)剖検診断 の3業務があります。

生検・細胞診診断

胃に痛みがあった場合、胃の中に小さなカメラを入れ、病変部を採取し、顕微鏡で良い病気であるか悪い病気であるかを判定します。胸水・痰・尿・子宮擦過・乳汁分泌物の細胞から良性か悪性かの判定を行います。

手術材料診断

病変部が悪いもの(がん)と判定されると、手術がなされ、手術材料を短冊状に多数切り出し、標本から病変部の地図を作製します。
がん細胞が増殖している胃壁の深さ(表層の粘膜に限局しているのか、深層の筋層あるいは筋層を越えているのかを判定する)と、がん細胞が血管内、リンパ管内あるいはリンパ節に入り込んでいるか、がん細胞が手術断端面や切離面に顔を出しいるかどうかを判定します。

剖検診断

懸命な治療にもかかわらず、原因がはっきりしないで亡くなられた時は、原則として故人と一番近い近親者の許可をいただき、死体解剖資格認定証明証(大学教授の指導の元で5年以上の病理研修中、20体以上の解剖を行い、解剖書類提出後、厚生大臣から戴く)を持つ認定病理医により解剖がなされます。肉眼所見と顕微鏡所見で原因を判定し、今後の医療に役立てることができます。解剖、写真撮影、肉眼所見の記述、検体の切り出し、検鏡、剖検報告書作成、日本病理学会への剖検書類提出臨床病理検討会という一連の作業を行います。

標本作製

  1. 採取された検体をホルマリン(呼吸器と皮膚に対し有害物質)で固定し、アルコールとキシロール(呼吸器系有害物質)で処理し、パラフィン(ロウソクのロウ)に埋め込みます。パラフィンブロックといいます。ミクロトームという機械で、パラフィンブロックを約3ミクロン(1mmの1000分の3)の厚さで薄切し、ガラスに貼ります。替刃の普及が大きな進歩をもたらしました。
    パラフィンを溶かし、自動染色装置で染色します。細胞の核は青色、細胞の胞体は赤色に染め分けます。接着剤を載せ、自動封入装置で薄いガラスで被うと出来上がりです。

  2. 尿中の細胞診断の場合は、試験管を遠心機で回し、細胞を試験管の底に集めます。特殊遠心機で直径約5mmの中に細胞を自動的に集め、細胞をガラスの上に付着させます。アルコールで細胞を固定し、染色します。
    細胞の核は青色、細胞の胞体は赤色と緑色に染め分けます。1次と2次の難しい細胞診試験を合格した技師(スクリーナー)が細胞の良性悪性を判定します。

  3. 術中迅速診断がある。-20度で凍らせた未固定生検体で切片をつくり、腫瘤が悪性か良性か、断端部にがん細胞が残っているかの診断をします。約10分という短時間で標本を作製し、各手術室と直通電話で病理診断を伝えます。凍結切片はパラフィン切片より数倍厚く、核が重積し判定するのが難しいです。病理検査技師は特殊技術を持つ職人で、仕事の多くは手作業です。生検・手術検体の処理、標本作製、系統解剖学の理解、病理解剖の手技を完全にマスターするには多くの時間(約5年)と訓練が必要です。