小児科ブログ

【アレルギー検査】 皮膚テストと血液検査はどう違うの?

食物アレルギーの原因を調べるためのアレルギー検査と言えば「血液検査」と考えられている方が多いのではないでしょうか。

血液検査とは血液中の「特異的IgE抗体」と言うアレルギーを起こす原因物質の量を測定するもので、ここでは「血中特異的IgE抗体検査」と呼ぶことにします。

また、「皮膚テスト」というものもあり、違いを理解されている方は少ないと思います。今回は、「皮膚テスト」について説明したいと思います。

皮膚のアレルギー検査というと「パッチテスト」という言葉が患者さんのご家族からよく聞かれます。しかし、食物アレルギーの検査で行うのは「プリックテスト」という検査方法です。まず、この2つの違いを説明したいと思います。

簡単に言えば、「プリックテスト」はアレルギーを起こす物質を摂取してからすぐに症状が出る(即時型の)病気のリスクを評価する検査で、「パッチテスト」は金属アレルギーなどのアレルギーを起こす物質と触れてしばらく時間が経ってから(遅延型の)症状が出る病気のリスクを評価する検査です。 

一般的に言う「食物アレルギー」では2時間以内に症状が出る「即時型」の食物アレルギーを指しますので、「プリックテスト」を行うことになります。

では、どのように「プリックテスト」を行うのでしょうか?

まず、アレルギーを起こす代表的な原因物質についてはプリックテスト用の液体が市販されています。それを皮膚の上に垂らし、専用の針でその上から刺します。

 

  日本アレルギー学会 皮膚テストの手引き

刺した後は素早くティッシュなどで拭き取ります。

日本アレルギー学会 皮膚テストの手引き

15分から20分後に膨れた部分の大きさ(膨疹径)、赤くなった部分の大きさ(紅斑径)を確認します。

日本アレルギー学会 皮膚テストの手引き

実際の検査では調べたい原因物質の液体の他に必ず膨れるはずの液体と必ず膨れないはずの液体の検査を併せて行うことで、検査がうまくいっているかを確認します。膨疹径3mm以上(海外の報告では2mm以上とする報告もあり)、もしくは必ず膨れるはずの液体を使用した部分の膨疹径の半分以上の反応を陽性と判断しています。

また、プリックテスト用の液体が市販されていない場合でもプリックテストを行うことができます。それが、「プリックトゥプリックテスト(Prick-to-Prick test)」です。

やり方としては、液体を垂らす代わりに直接調べたい原因物質そのものにプリックテストの専用針で刺します。

日本アレルギー学会 皮膚テストの手引き

そして、そのまま患者の皮膚に刺し、15-20分後に判定します。

日本アレルギー学会 皮膚テストの手引き

このやり方で様々な調べたい原因物質でも検査をすることができます。

では、ここまで説明した「皮膚テスト」「血中特異的IgE抗体検査」の違いを以下に示します。

日本アレルギー学会 皮膚テストの手引き

皮膚テスト最も良い点は迅速性です。血中特異的IgE抗体検査はほとんどの病院で外注検査となり、数日間の結果待ち期間が必要になるのに対し、15-20分で結果が出るため、その場で判断が可能になります。また、もう一つは未知アレルゲンによる検査が可能と言う点です。アレルゲンとはアレルギーの原因物質のことです。先ほど説明したプリックトゥプリックテストを利用することで血中特異的IgE抗体検査で測定できない項目でも評価が可能となります。

逆にデメリットとしては抗ヒスタミン薬を内服していると、検査が膨れるはずの液体でも膨れなくなってしまうことがあります。そのため、72時間前から抗ヒスタミン薬を中止して皮膚テストをします。もし抗ヒスタミン薬を内服して来院した場合には、日を改めるか、血中特異的IgE抗体検査を実施することになります。また、食物アレルギー診療において大事なプロバビリティカーブも皮膚テスト結果では使えません。この点はView39などの検査と同様です。(39項目のアレルギー検査は慎重にすべき4つの理由)

「皮膚検査」と「血液検査」、どちらか、もしくは両方やるかメリット、デメリットを考えながら検査をしていくことが大切です。

 

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