任せて安心 当院のドクターたち

産婦人科
ドクターインタビュー

リスクのある妊婦さんも前向きにお産が迎えられるような体制が整っています
副院長/総合周産期母子医療センター長/主任部長
藤木 豊

#01 ハイリスクの患者さんを24時間サポート

当院の産婦人科は一般病院の産婦人科とは少し異なる機能を持っており、高次医療機関として、地域の中でもハイリスクと呼ばれるような比較的難しい症例を扱うという役割を担っています。
1992年に「総合周産期母子医療センター」を設置し、お産と生まれた赤ちゃんに関するあらゆるトラブルに対応するための施設として、地域の妊産婦様をサポートし続けています。
当科には常勤医師が11名在籍しています。11名も産婦人科医がいる病院は茨城の県央・県北地域にはなく、大規模病院として診療各科とも協力して、24時間体制で連携した治療に当たっています。
産婦人科の医師だけではなく助産師も数十名在籍しており、常に医師・助産師・看護師のチーム体制で患者様のサポートをしています。

#02 こども病院と連携したチーム医療が当院の特徴

総合周産期母子医療センターでは主にハイリスク症例を扱うことがミッションです。産婦人科医だけで対応できるものではなく、救命救急部門や手術室、麻酔科と常に密な連携をとり、ハイリスクな母体の緊急手術にもすぐに対応ができるような体制をとっています。
当院の年間分娩件数は500〜600件程度で決して他院に比べて多い件数ではないですが、そのうち400件程度がリスクの高い症例です。ハイリスクの患者さんが多く集まっているということになります。
ハイリスクなお母さんからはどうしてもハイリスクな赤ちゃんが生まれてしまう可能性が高いですが、そういった患者さんの対応も、隣接する県立こども病院の新生児科の先生たちとも日々密に連絡を取り合いながら、チームとして診療に当たっています。
我々産婦人科医だけではなく、病院の仕組みや体制であったり、隣の病院との協力であったり、病院に関わる人やその周りが一丸となって、チーム医療として診療にあたっているということが当院の特徴です。

#03 当院への患者さんの受け入れ経路

患者さんが当院に来られる理由として一番多いのは、妊娠の経過中は他の病院で管理をしていたけれども緊急でトラブルが起きてしまい、救急車で搬送・転院されてくる「母体搬送」と呼ばれるパターンです。
それ以外の理由としては、前回の妊娠分娩で異常やトラブルがあり、最初から当院にかかるという患者さんもいらっしゃいます。
このように当院にかかる患者さんの入り口としては他院からのご紹介が多くありますが、ローリスクの患者さんであってもお断りすることはありません。ご近所という理由で当院に来られる方も多くいらっしゃいます。また他県で妊婦健診をされていて、水戸出身の方が里帰り出産という形でこちらに帰ってくる方も増えています。

#04 可能な限り自然な形の分娩を目指す

近年は無痛分娩などの分娩方法も多様化し、不妊治療の分野でも技術が進歩しており産婦人科医療の幅が広がっています。無痛分娩や不妊治療などは患者さんのニーズも目立つ分野でもありますが、当院は三次救急・周産期医療の機能に特化していますので、当院では扱わず専門で行っている他の病院にお願いしています。
分娩については、ハイリスクであっても原則的には自然な形の経膣分娩を目指しています。ハイリスク=帝王切開と決めつけるのではなく、陣痛促進剤も出来るだけ使用しない、自然な形での分娩がベストだと思っています。
一方で当院ではどうしてもハイリスクの患者さんが多いので、計画的な分娩が必要だったり、ローリスクの方に比べると帝王切開の必要性が高かったりということもあります。一般の病院に比べると帝王切開や特殊な形での分娩の割合は多くなっています。

#05 専門領域の出生前診断と母体救急救命

私が得意としている専門領域は出生前診断と母体救命救急です。
出生前診断は主に超音波での検査で、胎児の様々な臓器を細かく観察することで病気の有無を産まれる前に判断します。
最近は技術が進歩し、超音波検査の他にも母体の血液から診断するものや、羊水検査など様々な種類があります。自分だけでなく、当院には専門性の高い医師が在籍していますので、胎児のほとんどの病気を第一線の出生前検査で対応することができます。
救命救急の分野では、妊娠高血圧症候群や常位胎盤早期剥離、分娩時大量出血など放っておくと命に関わるような、緊急の処置が必要となる疾患を扱います。年間症例の中でも多い件数ではないですが、お母さんと赤ちゃんを一人でも助けられるように、速やかに適切な治療ができるよう日々努めています。
救命救急領域は産婦人科医だけでは対応できるものではありません。救命救急の医師や看護師、麻酔科と連携し、緊急事案にも常に対応できる体制を整えています。

#06 代表的なハイリスク出産とその管理体制

私が医者になった30年前は、40歳の妊婦さんはほとんど存在しないといってもいいほど珍しかったのですが、不妊治療が進歩した現在は40代の妊婦さんは決して珍しくなくなっています。現在当院では10人に1人くらいは40代の妊婦さんです。
高齢出産だからといってすべての妊婦さんが難産になるわけではありません。特別何か問題があるということはなく、ほとんどの患者さんは順調にお産を迎えています。中には妊娠中のトラブルが出てきてしまう患者さんもいらっしゃいますが、当院では常にリスクを把握しお母さんが安全にお産に至るように管理ができています。
高齢出産以外にハイリスク出産と呼ばれるものには、特有の合併症として「妊娠高血圧症候群」があります。正常だった血圧が妊娠中に上がってしまい、母子ともに危険な状態になることもあります。お母さんの年齢が上がるごとに少し頻度が増えてきますので、早期発見のために健診を毎回きちんと受けてリスクを早期に発見することが大切です。
その他に産婦人科の代表的な病気としては切迫早産があります。40週の経過を待たずに7〜8ヶ月程度で子宮口が開き、赤ちゃんが出てきそうな状態のことです。このような妊婦さんには出来るだけ産まれないように治療をします。
産まれてしまう場合には帝王切開が適切なのか、経膣分娩が適切なのかを判断し、産まれた後に対応をする県立こども病院の先生と相談しながら、より良い分娩の時期を検討します。

#07 整備された母体搬送の体制

地域の開業医の先生の施設から当院に患者さんを紹介いただくことを母体搬送といいます。母体搬送には地域によって定められた周産期医療体制と呼ばれる、統一されたルールが存在します。当院は県央・県北地域といって水戸から日立、北茨城までの地域を担当しています。
我々の病院をサポートしてくれる協力病院として、水戸赤十字病院と日立総合病院は地域の母子センターとしての役割を果たしてくれています。
開業医の先生から当院に紹介していただく患者さんの症例は早産に関連するものや未熟児出生に関連するもの、母体に重篤な疾患がある場合などと、非常に幅が広いです。症例ごとに地域の先生と連携し、臨機応変に対応をしています。

#08 ローリスクの患者さんにも対応

当院の産婦人科のイメージとしてハイリスク分娩を中心に扱うというイメージが皆さんの共通認識としてあるかと思います。リスクのない方が受診を少しためらわれると聞きますが、私たちは原則的にどのような患者さんにも喜んで対応しています。ローリスクの患者さんであっても、ぜひ当院を受診していただきたいです。
ハイリスクの患者さんについては、我々は苦手な領域もなくほぼ全ての症例の対応が可能ですので、安心して当院を選んでいただければと思います。
女性の多くは一生のうちに妊娠・分娩を経験するのだと思います。どの施設を選べば良いのか、妊娠とはどのようなものなのか、心配な方が多いと思います。
当院の助産師は全員女性ですし、産婦人科の医師も多くが女性というくらい女医の割合が非常に高いです。産婦人科にかかるということは女性にとってかなり敷居が高いことだと思いますが、まずは病院に来て悩みをお話していただければ、少し安心していただけるのではないかと思います。

※一部診療科の事情により、対応できない疾患もございます(例:精神疾患、呼吸器疾患など)

藤木 豊 (ふじき ゆたか)
職名 副院長/総合周産期母子医療センター長/主任部長
出身大学(卒業年) 筑波大学(平成4年)
専門領域 周産期
産科救急
出生前診断
認定資格等

日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・指導医
日本周産期・新生児医学会 周産期指導医
母体保護法指定医
医学博士