脳神経外科

脳神経外科 ドクターインタビュー

確かな技術とチーム医療で疾患に応じた治療を選択
部長 小磯 隆雄

#01 24時間体制で支える一貫診療

当院の脳神経外科は、頭部外傷や脳卒中をはじめとする脳神経疾患に対し、24時間体制で診療を行っています。救急医療から専門的な手術治療まで一貫して対応し、緊急時には迅速かつ的確な判断のもとで治療にあたります。脳の病気は時間との勝負となる場面が多く、初期対応の速さと治療方針の見極めが、その後の回復や生活の質に大きく影響します。

そのため当科では、救急搬送から院内での検査・治療へ円滑に移行できる体制を整え、必要な治療を適切なタイミングで行うことを重視しています。また、当院は三次救急医療を担う総合病院として、重篤な脳神経疾患に対する高度な医療にも取り組んでいます。心疾患や腎疾患、悪性腫瘍などの基礎疾患をお持ちの患者さんについても、院内の各診療科と連携しながら全身管理を行えることが当院の強みです。来る症例は可能な限り受け入れ、目の前の患者さんに対してできることをやりきる、という姿勢を大切にしています。

脳の治療にとどまらず、合併症の予防や再発リスクの低減にも目を向け、安全性と確実性を第一に、根拠に基づいた医療を行っています。

#02 脳卒中は時間との勝負

脳卒中は大きく分けて、血管が詰まる「脳梗塞」、血管が破れて出血する「脳出血」、動脈瘤の破裂などによって起こる「くも膜下出血」に分類されます。いずれも突然発症し、短時間のうちに意識障害や麻痺、言語障害などを引き起こすことが特徴です。
特に脳梗塞では、発症から治療開始までの時間が短いほど、脳へのダメージを最小限に抑えられることがわかっています。「時間との勝負」と言われる所以です。

一方で、症状が軽く見えるケースや、一時的に改善したように見える場合でも、その後に悪化することがあります。そのため、早期に専門医が介入し、正確な診断と治療方針の決定を行うことが非常に重要になります。当院では、こうした脳卒中の特性を踏まえ、初期対応から専門的治療までを切れ目なく行える体制を整えています。

#03 脳卒中治療に必要な”原因の見極め”

脳卒中は、再発が起こりやすいことで知られています。そのため、原因の見極めが重要です。例えば、脳梗塞は血栓が急に詰まるタイプと、動脈硬化によって血管自体が徐々に狭くなるタイプに分けられます。それぞれ治療方針が大きく異なります。また、再発を防ぐために、生活習慣の改善、基礎疾患の管理など、長期的な視点での治療が欠かせません。脳卒中は「一度治して終わり」の病気ではなく、その後の人生を見据えた医療が必要な疾患だと考えています。

#04 疾患に応じて治療法を選択

私の専門は脳の血管疾患ですが、現在の治療は大きく分けて「開頭手術」と「血管内治療(カテーテル治療)」の2つがあります。割合としてはおおよそ4対1くらいで、手術が多い状況です。ただ、これは私が手術を好むからというわけではなく、疾患によってより良い成績が示されている治療法を選んでいる結果です。ガイドラインや論文で手術が第一選択とされている場合は手術を行い、リスクが高い場合や血管内の方が適している場合はカテーテル治療を選択します。

最近は造影CTやMRIの性能が向上しており、侵襲が少ないCTやMRIだけで十分に診断できるケースも増えています。ただし、より詳細な情報が必要な場合や血管内治療を検討する際には、カテーテル検査を行い、治療が可能かどうかを判断します。

#05 患者さんが納得できる選択を支援

当院では、私が赴任するまでは血管内治療の体制が整っておらず、適応のある患者さんは他院へ紹介していました。現在は院内でどちらの治療にも対応できるようになり、より多くの患者さんに最適な方法を提供できる体制が整っています。

治療の説明では、どちらかに偏らず、検査結果や根拠に基づいて公平にお伝えしています。その上で「どちらの方法がより良い結果をもたらすか」を一緒に考え、最終的に患者さんに選んでいただくようにしています。

近年は全国的に、手術よりも血管内治療を行う医師が増えています。そのため、手術という選択肢を提示できないケースも少なくありません。当院では、どちらの治療も提示できる点が強みだと思っています。患者さんが納得して治療を選べる環境を整えることが、私の役割の一つだと考えています。

#06 手術と血管内治療の両方をできるメリット

当院で行っている血管内治療の主な対象は、脳動脈瘤と頚動脈狭窄症に対するステント留置術です。さらに、脳梗塞の際に血栓を回収する治療もガイドラインで推奨されており、緊急時には必ず対応しています。

また、手術をより安全に行うために、手術の前に血管内治療を組み合わせることもあります。たとえば脳腫瘍や動静脈奇形など、出血のリスクが高い症例では、手術前に血管を一部塞ぐことで手術中の出血を抑えることができます。

私は手術と血管内治療のどちらも行っているため、手術前に自分で血管を詰め、そのうえで開頭手術を行うこともあります。これにより、治療全体の流れを一貫して管理でき、患者さんへの負担を減らしながら安全性を高めることができます。

手術と血管内治療をそれぞれ別のチームで担当する施設も多い中で、治療全体を通して状況を見極め、その人にとって最も適した方法を選べるのが利点です。手術時間を短くできたり、負担の少ない方法を取れたりと、結果的に患者さんにとってのメリットが大きくなると感じています。

#07 手技の質を磨き続ける

脳卒中や脳血管の手術は、医師の判断や手技によって結果が左右されやすい分野です。同じ診断名、同じ治療方針であっても、手術中の判断や手の動き、リスクへの気づき方の差が、合併症の有無や回復の質に影響します。

私はより良い手技を目指して、大学病院や様々な医療機関で学んできました。

手術には流儀がありますが、多くの流儀を学ぶことによって手技を洗練することができたと思います。学ぶ際に特に大切にしていたことは、「数をこなすこと」ではなく「学ぶ姿勢」です。手の運びや姿勢、器具の使い方、判断のタイミングまで細かく観察し、自身の手術と比較しながら改善を重ねてきました。こうした地道な積み重ねが、結果として安全性の向上につながると考えています。

#08 最後まで全力を尽くす

脳外科の手術では、直径1ミリにも満たない細い血管をつなぐ場面があります。顕微鏡下で糸を通し、血流を確認しながら慎重に進めますが、血管の内側がわずかにめくれていたり、動脈硬化が強かったりすると、血の通りが悪くなることがあります。

これまでのバイパス手術の中には、数例ですが血管が詰まってしまったケースがありました。そういった症例に対し、「仕方がない」とあきらめることなく何度も再縫合を行い、血流の回復に努めています。途中で想定外のことが起きても、できることを一つずつ積み重ねていく。その姿勢を大切にしながら、目の前の患者さんに向き合っています。

#09 チームで病気に向き合う

脳卒中診療では、脳神経内科との連携が欠かせません。当院では日常的にカンファレンスを行い、内科的治療と外科的治療の両面から治療方針を検討しています。手術を行う際も、一人の判断に委ねるのではなく、複数の医師が意見を出し合い、それぞれの専門性を持ち寄って最も適切な方法を選択しています。このチームとしての意思決定が、当院の脳卒中診療を支えています。

#10 患者さんと病気に向き合う

脳外科医になり、脳の病気で生活が大きく変わってしまう患者さんを多く目の当たりにしてきました。脳疾患では、発症してからでは対応が難しいことも多く、脳卒中は再発を繰り返すケースも少なくありません。

患者さん自身も病気に向き合い、予防する気持ちが大切です。私は、そのお手伝いができればと思っています。健康な生活が送れるよう、一緒に病気に向き合いましょう。

小磯 隆雄 (こいそ たかお)
職名 部長
出身大学(卒業年) 筑波大学(平成20年)
専門領域 脳外科疾患全般/血管外科手術/脳血管内治療/脳腫瘍
認定資格等
日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医・指導医 日本脳神経血管内治療学会専門医 日本脳卒中学会 専門医・指導医 日本脳卒中の外科学会 技術認定医 博士(医学)