栄養科

食事で生活習慣病予防

はじめに

私たちの体は、食べたものでできています。日々の食生活は、健康を守る大切な土台です。 特に「栄養バランスの偏り」や「塩分の取りすぎ」は、高血圧や心臓病、腎臓病、がんなど生活習慣病のリスクを高めることが知られています。 この記事では、厚生労働省の食事摂取基準(2025年版)や最新の国民栄養調査をもとに、栄養バランスの良い食事の基本減塩の工夫についてわかりやすく解説します。

栄養バランスの良い食事とは?

主食・主菜・副菜をそろえる

健康的な食事の基本は、「主食・主菜・副菜」の組み合わせです。

  • 主食(炭水化物):ごはん・パン・麺類など、体のエネルギー源
  • 主菜(たんぱく質):肉・魚・卵・大豆製品など、筋肉や血液をつくる
  • 副菜(ビタミン・ミネラル・食物繊維):野菜・芋類・きのこ・海藻など、体の調子を整える

さらに、乳製品や果物を加えるとよりバランスが整い、健康づくりに役立ちます。

適正体重の目安:BMIとは?

食べすぎや栄養不足を判断するひとつの目安に「BMI(体格指数)」があります。
年齢により、目標とするBMIは違います。

適正体重を保つことも、生活習慣病の予防に大切です。

減塩が大切な理由

塩分(ナトリウム)は体に欠かせない栄養素ですが、とりすぎると血圧が上がり、高血圧・脳卒中・心筋梗塞・腎臓病などのリスクが高まります。

食塩摂取の目標量(18歳以上)

厚生労働省の基準では次のように定められています。

  • 男性:7.5g/日未満
  • 女性:6.5g/日未満

高血圧や慢性腎臓病(CKD)の方は6g/日未満が推奨されています。
しかし現状では、日本人の平均摂取量は

  • 男性:10.7g/日
  • 女性:9.1g/日
    (令和5年 国民栄養調査より)

まだ目標より多く、とりすぎが課題となっています。

減塩の工夫:毎日の生活でできること

1. 調味料の塩分を知ることから始めましょう

減塩の第一歩は、普段よく使う調味料にどれくらいの塩分が含まれているかを知ることです。
調味料や加工食品には必ず「栄養成分表示」があり、そこに塩分量(ナトリウム量)が記載されています。ぜひチェックしてみましょう。
例えば、

  • 一般的な醤油(小さじ1杯):約0.9gの塩分
  • 減塩醤油(小さじ1杯):約0.5gの塩分

同じ「醤油」でも、これだけの差があります。

塩分メモを作ってみる

よく使う調味料の塩分量を表にして「塩分メモ」を作っておくと、普段の食事で自然に意識できるようになります。

計量スプーンで「見える化」

調味料はつい「目分量」で使いがちですが、計量スプーンで実際に計ることを習慣にすると、必要以上に使わなくなります。

「毎回計るのは面倒」と思うかもしれません。ですが、最初に量を知っておくだけでも感覚が身につき、自然と減塩につながります。

2. 「かける」より「つける」

調味料を使うときは、料理全体に「かける」のではなく、小皿に取り分けて「つける」のがおすすめです。
例えば、

  • 醤油やソースを計量スプーンで量って小皿に入れる
  • 必要な分だけ少しずつ「つけて」食べる

こうすることで、調味料の使用量を把握でき、塩分の取りすぎを防ぐことができます

3. 汁物は汁を残す

「薄い味=減塩」とは限りません

「口で感じる薄さだけでは減塩とは言えない」ということをご存じでしょうか?

たとえば、少なめの味噌汁1杯に使われる味噌には、約1gの塩分が含まれています。これをだし汁と具材と合わせると、塩分濃度は0.7%になります。

ここで、この味噌汁にさらにお湯を100cc足すとどうなるでしょうか。
塩分濃度は0.4%に下がり、口当たりはとても薄く感じます。
しかし、含まれる塩分は1gのまま。実際には減塩できていないのです。

一方で、味噌汁を薄めるのではなく、飲む量を半分にする方法があります。
この場合、塩分摂取量は0.5gに減らすことができ、さらに具材を食べることで満足感も得られます。

また、毎日数回味噌汁やスープを飲む習慣がある方は、まずは飲む回数を減らすことから取り組んでみるのも効果的です。

ポイント

  • 味を薄めても塩分量は変わらない
  • 飲む量や回数を減らすことが本当の減塩につながる
  • 具材をしっかり食べることで満足感を保てる

減塩は「味を我慢すること」ではなく、工夫して塩分を減らすことが大切です。

4.香りや風味を足す工夫で「おいしく減塩」

塩分を減らすと「味が薄い」「物足りない」と感じることがあります。そんなときは、香りや風味をプラスしてみましょう。

  • 香味野菜:ねぎ・しそ・みょうが・しょうが・にんにくなど
  • 香辛料:こしょう・七味・カレー粉など
  • だし:昆布・かつお節・しいたけなど
  • 香ばしさ:焼き目や炒める調理法で風味アップ
  • 酸味:レモン、柚子など

これらを加えることで、薄味でも満足感があり、時には塩分ゼロでも美味しく食べられるようになります。

「香りや風味を足す」という発想

味が足りないと感じたとき、つい醤油や塩を加えたくなりますが、そこで一度立ち止まって、香りや風味を足す工夫をしてみましょう。

減塩を考えた栄養バランスの良い食事例

減塩と栄養バランスは両立できます。塩分を控えても、「味のない食事」になるわけではありません。

1食の具体例

  • 主食:白飯(塩分 0g)
  • 主菜:豚の生姜焼き(塩分 1gで味付け)
  • 副菜:おひたし+ポテトサラダ(塩分 合計1g)

→ 合計2gの塩分で1食分が完成します。
栄養バランスも整い、十分に「おいしい食事」といえる内容です。

他の料理も食べたいときは?

「味噌汁も飲みたい」「漬物も食べたい」というときもありますよね。
そんなときは、

  • 味噌汁の回数を減らす
  • 漬物の量を控える
  • 他の料理の味付けを少し薄める

といった工夫で、1日の合計塩分量を調整することが大切です。

栄養バランス×減塩で得られる効果

  • 高血圧の予防
  • 脳卒中や心筋梗塞のリスク低減
  • 腎臓病の進行を抑える
  • 肥満予防・体重管理
  • 生活習慣病全般の一次予防

減塩とバランスの良い食事を組み合わせることで、健康寿命をのばし、日々の生活をより快適に過ごせるようにしましょう。

まとめ

  • 食事は「主食・主菜・副菜」を基本にしましょう。
  • 塩分は男性7.5g/日未満、女性6.5g/日未満が目標です。
  • 汁を残す、香味野菜や香辛料を使うなど、少しの工夫でおいしく減塩が可能です。

健康は毎日の積み重ねから生まれます。
「少しの工夫」で「大きな健康効果」を、今日から取り入れてみましょう。